究極のオムライス

そのシェフは、ワインとは、出会いだといった。

食の頂点に居座るのは、天然自然のもつ力を最大限に引き出す魔術的な環境なのでないか。

そういう意味で、究極の料理人は、もはや料理をしていないことになる。食のもつ意思を繋げていく存在なのだ。

究極の食事は、死を提供することで、永遠の命を生み出す。

その小さな波は、舌と嗅覚から脳の中心に刻まれ、胃から心臓を伝い、腸で伝説を作る。

無我夢中で、身体中にとりいれた、カレーライスはいまも生きているのだ。

あの時の味が、いまの人間関係をつくっている。

そのかすかな意思は小さな波のように体の隅々を這い回り、決して忘れることのない細胞の中の一部まで成り下がった。

水が滴り落ちるかのように、遺伝子の根っこまでおちるその雫は、二度とは体験できないということを知らなかった。