Shangri-La

タクシーとは不思議な乗り物だ。

手を挙げ、目的地さえ伝えれば、あとはぼーっとしているだけで、電話していようと寝ていようと、電子マネーをピッとして、目的地の目の前だ。

どこでもドアのようだ。

 

目的地までの道筋も、目的地にある道路や建物や街路樹の名前も、素材も、建築方法も、いつどのくらいの費用をかけてできたのか、誰が作ったのかも全く知らなくても、窓からいろいろなものをただ眺めているだけで現地に到着する。

 

しかし、目的地を正確に伝えないことには絶対に着かない。

「銀座のあの辺」と伝えたってタクシーは絶対につくことはない。

銀座1-1-1と伝えないと着かない。

 

次に行くべき地番や座標を細部まで確定しないと、どんなに便利な乗り物が目の前を走っていても一向に目的地に着くことはない。

 

そして銀座1-1-1は欠番なので絶対に着かない。

永遠と行き場もなく漂うタクシーもあるのかもしれない。