その怪獣は小さな体にもかかわらず、大きな口をあけてスパゲティを頬張る。
口の中がスパゲティでいっぱいなのに、チャーハンもかきこむ。
その怪獣はなんでも食べる。
チーズケーキも、コーヒーも食べる。
綺麗なお月様も、雨で濡れたマンホールも、もやもやしたお兄さんの悩みも、イライラしたお姉さんの焦りも食べる。
救急車も、消防車も、パトカーも、クレーン車も食べる。
食べて味わって、ぐっすり眠る。
味わうのが大切だと言わんばかりに、真顔で食べる。
食べた後に特になんの感想も言わない。
ただただ、うなずく。
そしてみんなが静まり返った夜遅く、夢の中で食べたものをもう一度味わい尽くす。
全身が至福で満たされる。
消防車とスパゲティが絡み合う。
そうして味わいつくして、空っぽになる。